2. イベント実施概要
(1) Input Session:世界のスタートアップ・エコシステムPR事例
初めに、藤本氏より世界のスタートアップ・エコシステムPR事例についてご紹介いただきました。
日本のスタートアップ・エコシステムが抱える課題として、「スタートアップで働く人数の少なさや流動性の低さ」、「エグジットの手段の少なさ」等がありますが、中でも特に「エコシステムの点在化」が大きな課題となっています。日本には全国各地にエコシステムが多数存在するものの、エコシステム同士の横連携があまりとられていないため、個々のエコシステムからそれぞれ情報を入手しなければならない等、情報アクセスが困難であるといった問題が引き起こされています。その結果として、日本への進出に関心を寄せる海外のスタートアップ企業が、日本のスタートアップ環境に関する情報を十分に入手できないゆえに進出を諦めてしまうケースがみられます。
東京圏をはじめとした日本のスタートアップ・エコシステムが世界に向けた情報発信を更に強化していくためには、点在化している情報を集約し、定期的に発信することが必要です。具体的には、世界に向けて情報発信できる機会があればそれを最大限活用すること、伝えたい情報を絞り、定期的かつ高頻度に情報を発信すること、そして情報発信の際には適切なプラットフォームを活用することが大切です。また、Startup Blink Online Summit*1やEcosystem Player Meetup*2といった海外のスタートアップ・エコシステム都市やスタートアップ企業が集結する会議に参加し、自らのスタートアップ・エコシステムを発信するとともに他の都市の取組を知り、アンテナを広げることも有用です。
SNSを使ってスタートアップ・エコシステムをPRする際には、どの種類のSNSを使えばターゲット層に情報を適切に届けられるか、活用するSNSを取捨選択することが必要です。海外のスタートアップ・エコシステムのPR方法を見てみると、LinkedInやTwitter、Facebook等を活用していることが多く、またSNSの種類によって情報発信の対象ターゲットや用いる言語、発信内容を変える等の工夫が見受けられます。
スタートアップ起業家は、政府や行政、専門家、ベンチャーキャピタルやアクセラレーター、大手企業、アカデミア等多くの関係者と連携するとともに、PRの強化を通して最終的にどのようなスタートアップ・エコシステムの状態を目指していくのか、KPIを定めることも大切です。
*1:エコシステム開発における世界有数の専門家やリーダーが集結し、起業精神が繫栄する環境構築に関する知識の共有や議論を行うサミット。四半期ごとに行われている。
*2:Startup Genomeが開催するグローバルイベント。2022年度はポルトガルで開催され、約60の都市が参加した。イベントでは、各都市がそれぞれスタートアップ・エコシステムの取組や他都市とのコラボレーションの可能性について議論が行われた。